ピアノ奏者は見た!

お客さまの記念日の思い出に彩を添えて

ピアニスト 西田 利沙さん

お客さまの思い出の曲を演奏させていただく喜び

三田屋本店に勤めて約3年、これまで数え切れないほどの記念日に立ち会わせていただきました。
誕生日、結婚記念日の方がおられる場合は、その日にふさわしい曲を演奏させていただきます。それを合図にテーブルに特製のデザートが運ばれ、さらに記念撮影も。周囲のテーブルのお客さまも音楽に合わせて手を叩いたり、「おめでとう!」と声をかけたり、店内全体がお祝いムードになります。みんなに祝福され、ご本人も本当に嬉しそう。誰もが温かな気持ちになる瞬間です。
もともと私がこのお店で働きたいと思ったのも、「お客さまから365日の5日だけ選んで頂けるステーキ店でありたい」というお店のコンセプトに惹かれたから。今はピアノの演奏を通してお客さまの大切な時間に携われることが本当に嬉しいです。

記念日を迎えられるお客さまにもいろんな方がおられます。例えば、結婚のお祝いで来店される新婦さん。フェリックス・メンデルスゾーン作曲の『結婚行進曲』を演奏させていただくと、表情がパーっと明るくなり、周囲のご友人から「おめでとーう!」と一斉にお祝いのメッセージが伝えられます。大切な方々に祝福され、新婦さんの表情は幸せそのもの。その光景に、思わずこちらまで温かな気持ちになります。

また、今でもよく覚えているのが、年配の女性からサザンオールスターズの『いとしのエリー』をリクエストされた時のこと。曲を弾き出すと、突如その方がぽろぽろ涙を流し泣き出してしまったんです。どうやら、その日は大切な方のお悔やみの日で、思い出の詰まった曲をリクエストくださったようです。お客さまの思いがこもった曲を演奏させていただくって、すごく素敵なことですよね。曲を聴きながら在りし日の思い出を懐かしんでいただきたい。ピアノの音色が少しでもその思い出に彩りを添えられたら…。そして、亡き人を思うこの時間が、また一つ良い思い出になってほしい。そんな思いを込めて演奏させていただきました。

記念日の思い出を育む場所

私には、普段お店でピアノを弾く時、自分で決めていることがあります。それは「お客さまに合わせた曲をご提供する」ということ。記念日のお客さまがおられなくても、子どもさんならディズニーやジブリ、アンパンマン、大人の方ならジャズやドリームズカムトゥルーの曲と、年代や性別に合わせた選曲を心がけています。やっぱり、来られたお客さまに「この曲知っている!」とか「思い出のある曲!」と喜んでいただきたいですから、店内を見渡し「どんな表情をされているかな?」「どんな思いで来店されているのかな?」とイメージするようにしています。

その気持ちが届くのか、帰り際やトイレに立たれる際、「あの曲良かったです」「この曲好きなんです」と声をかけてくださる方がおられます。他店の場合、私たち演奏者がお客さまと直接お話させていただく機会はほとんどありません。三田屋本店は、記念日のたびに何度も足を運んでおられるお客さまが多く、親しみを感じて声をかけてくださるんです。なかには、「記念日のたびにここに通って、スタッフの方が撮影してくれる写真をずっと集めているのよ」とお話くださる方もおられるくらい。

ここは、皆さんの記念日の思い出を育む場所。今後も、一人ひとりのお客さまの心に寄り添った演奏で、ともに良い時間を重ねていきたいです。

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