三田屋記念日ストーリー

僕は当時、大学二回生。 三田屋でのアルバイトは正直、遊ぶお金欲しさでした。
だから、仕事は必要最低限。怒られない程度にやっておこうとまで思っていました。そしてアルバイト3日目のある日、ある車椅子のご婦人が来店されました。
僕:「いらっしゃいませ! こちらのお席にどうぞ」
と、マニュアル通りに声を掛けたアルバイトの僕に、そのお客さまは優しく、こうおっしゃいました。
お客さま:「私ね、このお店が大好きなの。スタッフが好き。雰囲気も好き。ピアノ演奏も。だから、いつも、ここに来たくなるの。私は三田屋の大ファンよ!」
そんな笑顔いっぱいのお客さまなのですが、実は、お体の具合が芳しくなく長く、近隣の大学病院に通院されていて、その帰りに必ず三田屋に寄ってお食事をされるお客さまでした。
それを知った僕は正直、「なんで、そこまでして? なんで、そんなに好きなの?」と思っていました。

そして、ある雨の日、そのお客さまは来店されました。

すると、お客さまのお車が駐車場に見えた途端、スタッフ数名が即座に、お車から出て来られようとするお客さまの元へ駆け寄り、サッと傘をさし、手際よく車椅子を車から出し、雨に濡れない様に慣れた様子でお客さまを店内へ。そして、店内で待ち構えていたスタッフが少々濡れてしまった車椅子をタオルで拭き、車椅子と共にお客さまをお席まで、まるで流れる様なコンビネーションで連れて行かれました。その間、お客さまへの笑顔と気さくな会話を忘れない先輩スタッフの自然な対応は僕を驚かせました。
お客さま:「雨の日の車椅子での外出はいろんな人に迷惑かけるかなって思うんだけど、ここのお店はいつも自然に接してくれるから有難いわ。 心のバリアフリーってところかしら(笑)」
スタッフ:「こちらこそ、ご来店嬉しく思います!」

そんな、お客さまと先輩スタッフの皆さんを前に、何もできなかった僕は、その時、初めて接客業の素晴らしさを教えて頂いたと思いました。と同時に「お客さまに喜ばれる仕事は、特別なサービスの提供ではなく、ごくごく当たり前の心配り・気配りの積み重ねから生まれるのだ」という事も学びました。
その事があってから僕のアルバイトとしての姿勢が変わった様な気がしています。 そして、数年後に社会人として働き始める僕に「仕事に向き合う大切な事」を教えてくれた、あの雨の日こそ、

「当たり前の心配り・気配りこそがお客さまへの本当のサービスだと知れた記念日」です。

三田屋、記念日ストーリー